今回は「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の11回目、上町台地の東側、味原池から毘沙門池にかけての地域の名所をご紹介します。
■産湯味原池(芳雪画)
藤原鎌足の先祖大小橋命(おおおばせのみこと)の産湯に用いられた産湯清水はかつて大坂六清水の一つに数えられた名泉でした。このことから、ここに祀られた味原稲荷神社はいつしか産湯稲荷と呼ばれました。産湯稲荷の境内は、現在東成区東小橋に鎮座する比売許曾(ひめこそ)神社の旧社地と伝えられ、これに隣接してあった味原池は比売許曾神社の祭神下照比売が天の磐船に乗って天降った旧跡といわれ、比売許曾御影池とも呼ばれました。
味原池は灌漑用にも使われた大池で、堤の上では、花見、摘み草、夕涼み、月見と四季折々の風趣が楽しめました。ここから天王寺までは屈指の桃の名所。弁当・酒を手にした遊覧の客、茶屋や料理屋も出てにぎわいました。味原池は大正8年(1919)に埋め立てられました。
近景に濃い赤い花の桃の木が大きく描かれ、味原池の向こう側には一面に淡い色の桃の花、桃山とか桃谷とか呼ばれていた地域です。その向こうには大坂城が描かれています。さらに遠景にあるのは北摂の山々でしょうか。
短冊と色紙の色合いは、濃淡の桃色、黄色、水色とカラフルですが、画面全体の色調のバランスはよくとれています。黄色の色紙の図柄は何を表しているのでしょうか?
浪花百景「産湯味原池」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
■野中観音桃華盛り(はなさかり)(芳瀧画)
もと上本町にあった難波寺(遍明院とも呼ばれる)は、源平の合戦で奮闘した平景清の念持仏と伝える十一面観音を本尊とし、東高津の野原の中にあるため、「野中の観音」と呼ばれ親しまれました。近鉄(旧大軌鉄道)敷設の際に現在地に移転しました。
安永年間(1772~1780)以降、当地付近で桃の植林が始まり、次第に上町台地の東斜面は一面に桃の里となりました。春には山も川も谷も紅霞で覆われた見事な美観を見ることができましたが、明治以降、市街地開発が進み、現在では桃山・桃谷など地名・駅名に名残を留めるのみです。
大きく描かれた桃の花と鳥が印象的な構図で、遠景にも桃の里が広がっています。短冊と色紙に描かれている図柄は、鳥の姿をデザインしたものでしょうか?色調も鳥と桃の花に合わせていますね。
浪花百景「野中観音桃華盛り」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
■壽法寺(芳瀧画)
四天王寺東門北側には、今は埋め立てられた毘沙門池が広がり、そのほとりに浄土寺院の是心山壽法寺があります。元禄4年(1691)筑後善導寺の信誉上人建立の庵が始まりと伝え、元禄11年(1698)廣誉上人が常念仏の寺として堂島の油問屋日野屋九兵衛(法名是心)とその妻(法名壽法)らの協力を得て、本堂・観音堂などの寺観を整えたといわれます。
往時は境内の糸桜とともに、本堂裏の僧坊庭先に植えられたに楓の大樹が著名で、紅葉の季節には眩しいまでに色づいたと伝えられます。一般に「もみじ寺」と通称されましたが、現在は楓の木はすべて枯れてしまいかつての面影は失われています。諸芸上達の観音としての縁から、歴代松鶴はじめ大坂の噺家の墓も多くあります。
紅葉が画面いっぱいに大きく描かれ、その下には紅葉狩りを楽しむ人々が小さく描かれています。短冊と色紙は淡い色調で、色紙には紅葉の図柄があしらわれています。
浪花百景「壽法寺」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
今回の3枚は、タイトルはすべて「浪花百景」で、「花」ですが、それぞれ字体が異なっています。百景の短冊と色紙の色や図柄、それにタイトルや絵師の字体は、それぞれの錦絵の画面に合わせて色合いやデザインがアレンジされているようです。丁寧に見ていくといろいろな発見ができそうです。
次に、この付近の地図により、地域の変遷を見ていきましょう。まず、江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、地図の左上に「アヂワラ池」「ウブ湯」「イナリ社」「野中クワンヲン」「壽法寺」が掲載されています。いずれも藍色の線で結ばれていて、当時のモデル観光ルートになっています。この地図は、上が東になっています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です) |
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵) |
明治41年から昭和42年の地形図(今昔マップ3より) |
今回は、「浪花百景」の味原池、野中観音、壽法寺をご紹介し、地域の変遷を見てきました。
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。
〇企画展「浪花の大ひな祭り」開催中です。4月2日まで。
会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日
ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。
≫ http://konjyakukan.com/kikakutenji.html
ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵) |
「ひなそふぁ」で、お雛さんと記念写真をどうぞ |
享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵) |
浪花の大ひな祭りエントランス |
〇今週のイベント・ワークショップ
3月14日(水)~17日(土)、19日(月)、22日(木)~24日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
3月18日(日)、21日(祝)、25日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
3月18日(日)
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00
イベント 町家でお茶会
町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。
協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
13時~15時
町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30
3月21日(水・祝)
ワークショップ 『組みひもストラップを作ろう』
①13時30分 ②14時30分
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費300円
3月24日(土)、25日(日)
イベント 彼岸の屋台
落語にある見世物小屋を再現した「見世物小屋」に「のぞきからくり」や「宝引き」など・・
お祭りは大人も子どもも楽しめます
13時~16時 8階・9階大通り
ぜんざい
11時~
100円/杯(なくなり次第終了)
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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