2018年3月27日火曜日

今週の今昔館(104) 今宮蛭子宮 20180327

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(13)

 今回は「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の13回目、今宮戎付近の名所をご紹介します。

■今宮蛭子宮(芳瀧画)
 「商売繁昌じゃ笹もってこい」の掛け声で有名な今宮戎神社の十日戎は、大坂の年頭最初の祭礼で、1月9日の宵戎から11日の残り福まで、毎年約100万人の参詣客で賑わいます。十日戎が過ぎなければ大坂の正月は明けないともいわれます。
 今宮は中世今宮浜と呼ばれた漁村が集まり浜市が開かれた地域で、戎神は豊漁をもたらす神として信仰されました。もとは四天王寺の西方守護の役割も担い、中世にはここから宮中への鮮魚奉納が行われたと伝えられます。今宮は西から来た戎神を豊漁の神として「新しい宮」へ迎え入れた社でした。
 近世、大坂が商都として発展し、船場商人が台頭しますが、四天王寺西門前の浜市と結びつき市神として祀られてから、商売繁盛の福神として信仰を集めることとなりました。十日戎は元禄年間(1688~1704)頃には現在の形態を整えていたといわれます。日ごろ閑散とした境内は十日戎の前後、福笹を手にした人で溢れかえります。
 参詣する大勢の人々が米粒のように描かれていて印象的です。

浪花百景「今宮蛭子宮」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

■廣田社(芳瀧画)
 廣田社は今宮戎神社の北に位置し、天照大神の荒魂を祀ります。今宮戎社とともに四天王寺の鎮守として知られました。浜が近く漁師町として栄え、今宮戎と同じく漁師の信仰を集めたといわれます。
 境内にあった「萩の茶屋」には、紅白の萩が植えられ、秋には花詣での人で大層にぎわいました。当時の境内は「廣田の杜」「蛭子の松原」と称されるほどの松林が広がる自然豊かな地で、現在とはずいぶん異なる景観であったようです。
 錦絵はひっそりと静まり返る境内の松林を満月が照らしている構図となっています。
 「萩の茶屋」の名は、今では付近の鉄道駅の名前として残るのみとなっています。

浪花百景「廣田社」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

■廣田星ヵ池稲荷(芳雪画)
 今宮戎神社の北、廣田神社の南には、かつて星ヵ池という池がありました。名称の由来については、聖徳太子の時代に、この池に天から星が落下し地中に没したという説と、かつて当地の耕作が不作であった時に村人が今宮戎に祈願したところ、それは悪星のしわざであるとして戎神がこれを防ぎ、悪星は音を発してこの池に落下したという伝承も伝わります。
 池は明治中期(19世紀末頃)の地図では確認できますが、大正末には完全に埋め立てられたようです。現在、廣田神社内に境内社として赤土稲荷が鎮座しています。
 真ん中に大きく描かれた樹木と鳥が印象的で、その向こうに星ヵ池と稲荷社が描かれる個性的な構図となっています。

浪花百景「廣田星ヵ池稲荷」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 3枚の錦絵のタイトルを見ると、絵師が芳瀧である「今宮蛭子宮」「廣田社」の2枚は「浪華百景」で、タイトルの字体や背景の短冊・色紙の色遣いがよく似ていて、シリーズ物のような作りになっています。
 それに対し、絵師が芳雪の「廣田星ヵ池稲荷」は「浪花百景」で、色使いもカラフルなものになっています。


 次に、天保年間発行の浪華名所獨案内を見ると、今宮村のすぐ北側に「戎社」があり、さらに北に道を挟んで反対側に「廣田」とあるのが廣田神社です。どちらも茶色の線が通っていて観光ルートとなっています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、「戎神社」と「廣田神社」の間には、難波堀川と鼬川とが結ばれた堀川が描かれています。星ヵ池らしき池は見当たりません。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 今回は、「浪花百景」の今宮蛭子宮、廣田社、廣田星ヵ池稲荷をご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。

〇企画展「浪花の大ひな祭り」開催中です。4月2日までです。
残りわずかとなりました。大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日
:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/kikakutenji.html

ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)
「ひなそふぁ」で、お雛さんと記念写真をどうぞ
享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)
ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)


〇大阪市立図書館の「デジタルアーカイブ オープンデータ利活用事例の紹介」で、「今週の今昔館」を紹介していただきました。
http://www.oml.city.osaka.lg.jp/index.php?key=jodi5lgcj-9509#_9509


〇今週のイベント・ワークショップ

3月28日(水)~31日(土)、4月2日(月)、4日(水)~7日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月31日(土)
イベント 日本の伝統文化『香道』

①13:00 ②15:00
日本の文化を体験しませんか
講師:香道「はなの会」主宰  神垣裕子
会場:今昔館9階展示室 薬屋 座敷(正座椅子等の持ち込可能)
対象:中学生以上、先着申込順各回20名 参加費:500円
(別途、大阪くらしの今昔館の入館料が必要です)

【申込方法】 ①往復はがきに以下の必要事項をご記入の上お申込ください
郵便番号、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、年齢、参加希望時間(①・②)
〒530-0041 大阪市北区天神橋6-4-20 
大阪くらしの今昔館「香道」係
②インターネットからのお申し込みは
「住まい・まちづくり・ネット」よりお申込ください

●申込期間:2/10~3/20(ただし、定員になり次第締め切ります。)
※いただいた個人情報は目的以外に使用いたしません。

4月1日(日)、8日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

4月1日(日)
町家衆イベント ワークショップ『すりこぎトンボを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、材料費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

4月8日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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