2018年3月20日火曜日

今週の今昔館(103) 河堀口 20180320

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(12)

 今回は「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の12回目、天王寺区河堀口から生野区御勝山付近の名所をご紹介します。

河堀口(芳雪画)
 延暦7年(788)時の摂津大夫和気清麻呂は河内と摂津の国境に川を掘って堤を築き、河内川を荒陵の南から西流させて海に注ぐようにすれば、沃野の開墾が図れると上奏しました。自ら23万人の労働者を率いて取り掛かりましたが、結局工事は困難を極め中止となりました。河堀口の地名はその際の東の口ということに由来すると伝えられます。
 また、幕末安政年間(1854~60)頃の「摂津名所図会大成」は、今日の河堀稲荷神社付近を本来河堀(こぼれ)といい、東の口を河堀口と呼んだが、今ではこのあたり一帯を「河堀口」と呼ぶようになった、と記しています。
 当時は住まいも商いも中心部に集中し、市街を少し外れるとのどかな田園風景が広がっていました。河川も清く、蛍狩りは夏の夜の一興でした。

浪花百景「河堀口」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

舎利寺(芳瀧画)
 その昔、この地に屋敷を構えていた生野長者は、自分の子供が口をきけなかったため聖徳太子にすがったところ、太子は前世で預けた舎利(釈迦の遺骨)を返してほしいと告げました。すると子供は三粒の舎利を吐き出し普通に喋れるようになりました。太子は舎利二粒を四天王寺、法隆寺に納め、一粒は長者に預けました。長者は一寺を建立しこの舎利を祀りました。それが舎利尊勝寺だと伝えられます。
 一時荒廃しますが、寛文年中(1661~73)徳川家綱の命により黄檗宗万福寺二世木庵性瑫によって再興されました。その後、寺内を築山掘池して整え、西国三十三所霊場巡りを設けると評判となり、皆こぞって参拝し興隆しました。
 錦絵にはかつて門前にあった太子御影松も描かれています。

浪花百景「舎利寺」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

御勝山(芳雪画)
 御勝山は推定全長約120mにも及ぶ前方後円墳で、築造年代は5世紀前半に求められています。5世紀前半の遺物が出土していますが、前方部は早くに削られ、西側の周濠に名残を留めるのみです。大阪市内でも数少ない古墳として大阪府の史跡指定を受けています。「摂津名所図会」などでは、藤原鎌足十世の遠祖大小橋命の廟所と伝えています。
 古くは岡山と呼ばれていましたが、大坂冬の陣、ついで夏の陣でも、真西にある茶臼山と同様に重要な攻防戦の舞台となりました。当地には両陣ともに徳川幕府の二代将軍秀忠が本陣を置き、見事戦いに勝利したため、それを記念して以降「御勝山」と呼ばれるようになりました。

浪花百景「御勝山」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 3枚の錦絵のタイトルを見ると、「舎利寺」は「浪華百景」、他の2枚は「浪花百景」で、短冊の色は3枚とも赤ですが、サブタイトルの色紙の色・図柄はそれぞれ違っています。「御勝山」の板元は「御霊軒」、他の2枚は「石和」となっています。

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、地図のタイトルの左横に「河堀口」、その左上に、(この地図は上が東ですから、北東の方向になります。)「舎利寺」、さらに北には「ヲカチ山」が描かれています。「河堀口」までは、藍色の線がつながっていますので、モデル観光ルートになっています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」は、当時の大阪市域が対象になっていますので、現在の生野区に相当するエリアにある舎利寺や御勝山は描かれていません。市電の停留所「南河堀口」がぎりぎり描かれています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 次に、今昔マップ3を利用して、舎利寺、御勝山付近の変遷を見てみましょう。明治41年の地形図では、田畑が広がる中を、平野川が蛇行して流れている様子がよくわかります。旧街道に沿って「舎利寺」があり、その北側の「農学校」のあたりが御勝山に当たります。昭和7年の地形図では平野川は付け替えられて、新平野川になり、旧河道は道路となって形が残っています。市街地化が進んできていますが、舎利寺周辺は農地が残っています。御勝山に三角点が設置されています。13.2mとあります。昭和22年の地形図で白っぽい部分は戦災によって焼失したエリアですが、このあたりの多くは戦災を免れている様子が分かります。御勝山を南北に分断する形で勝山通が東西に通っています。昭和32年の地形図では、市街地化がさらに進み密集市街地を形成しています。

明治41年から昭和32年の地形図(今昔マップ3より)

 今回は、「浪花百景」の河堀口、舎利寺、御勝山をご紹介し、地域の変遷を見てきました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「浪花の大ひな祭り」開催中です。4月2日までです。

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日
:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/korekara.html

ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)
「ひなそふぁ」で、お雛さんと記念写真をどうぞ

享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)


〇今週のイベント・ワークショップ

3月22日(木)~24日(土)、26日(月)、28日(水)~31日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月21日(祝)、25日(日)、4月1日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

3月21日(水・祝)
ワークショップ 『組みひもストラップを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費300円

3月24日(土)、25日(日)
イベント 彼岸の屋台

落語にある見世物小屋を再現した「見世物小屋」に「のぞきからくり」や「宝引き」など・・ 
お祭りは大人も子どもも楽しめます
13時~16時 8階・9階大通り

ぜんざい 
11時~ 
100円/杯(なくなり次第終了)

3月31日(土)
イベント 日本の伝統文化『香道』

①13:00 ②15:00
日本の文化を体験しませんか
講師:香道「はなの会」主宰  神垣裕子
会場:今昔館9階展示室 薬屋 座敷(正座椅子等の持ち込可能)
対象:中学生以上、先着申込順各回20名 参加費:500円
(別途、大阪くらしの今昔館の入館料が必要です)

【申込方法】 ①往復はがきに以下の必要事項をご記入の上お申込ください
郵便番号、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、年齢、参加希望時間(①・②)
〒530-0041 大阪市北区天神橋6-4-20 
大阪くらしの今昔館「香道」係
②インターネットからのお申し込みは
「住まい・まちづくり・ネット」よりお申込ください

●申込期間:2/10~3/20(ただし、定員になり次第締め切ります。)
※いただいた個人情報は目的以外に使用いたしません。

4月1日(日)
町家衆イベント ワークショップ『すりこぎトンボを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、材料費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html



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