2018年3月6日火曜日

今週の今昔館(101) 上町台地の名所 20180306

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(10)

 今回は「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の10回目、引き続き上町台地の名所をご紹介します。高津宮から上本町にかけてです。

■高津(芳瀧画)
 仁徳天皇ほか五神を祭神とし、社伝によれば、貞観8年(866)、大坂城付近、仁徳天皇難波高津宮の故地に創建したと伝えられています。その後東高津を経て、秀吉の築城に際し、天正11年(1583)現在地に移されたといわれます。社の西の断崖からの展望は難波津全体から六甲の山なみや須磨浦までを見渡せる名所でした。
 画中には戦災でただ一つ残った海鼠塀の神輿蔵があり、石鳥居の下は西坂(縁切り坂)に続きます。左には絵馬堂があり、遠眼鏡屋が繁盛しました。境内の桜のほか、付近は梅の名所でもあり、参道には湯豆腐屋、黒焼き屋、植木屋が立ち並んでいました。

 タイトル「浪華百景」の短冊、サブタイトル「高津」の色紙、絵師・板元名の短冊がすべてシンプルな赤地で控えめです。画面に集中できるように配慮しているのでしょうか。絵師は一養斎芳瀧で、板元の「石和」は「石川屋和助」を略したものです。
 遠眼鏡屋が望遠鏡を貸している様子が描かれ、鳥居の向こうには道頓堀に架かる橋の姿とその向こうには港の船が、蔵の左手には両御堂の大屋根が描かれ、背景には大阪湾と六甲の山なみと、高津宮絵馬堂からの展望が詳しく描かれています。

浪花百景「高津」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

■吉助牡丹盛り(芳雪画)
 現在中央区中寺1丁目にある自性院はもと高津神社境内にあり、「摂津大坂図鑑綱目大成」などには自性院の北隣に「うへ木や」と記されています。植木屋は下寺町や天満などにもたくさんありましたが、「摂津名所図会大成」は「就中高津の吉助を以て魁とす」と記しています。
 広い邸内に様々な和漢の草木を集め、四時花の絶えることがなかったといわれます。とくに初夏の牡丹、晩秋の菊造りの名人とされ、季節には整えられた邸内に見物の人々が大勢詰めかけて美しさを愛でました。吉助の店は鴻池や加島屋などの豪商の庭も手掛けましたが、明治末期には閉じたと伝えられます。

 牡丹の名人の吉助ということで、画面いっぱいに巨大な牡丹が描かれ、客がそれを見上げて歓声を上げるという奇抜な構図となっています。こちらの絵師は南粋亭芳雪で、タイトルは「浪花百景」です。短冊、色紙はいずれも無地ですがカラフルな色使いとなっています。彫り師の名前も入っています。

浪花百景「吉助牡丹盛り」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

■梅やしき(芳瀧画)
 現在の近鉄上本町駅周辺、いわゆる上六界隈には梅屋敷という梅見の名所がありました。園内に梅を植えつらね、樹下に席を設けて風流の士に供しました。評判をとった江戸の亀戸にあった梅屋敷に倣って文化初年(19世紀初頭)に作られたといわれます。
 園内の梅林の元では謡や舞い、連歌や俳句、双六など思い思いに宴席が設けられました。江戸時代は花見といえば桜ですが、梅の清香を楽しむ風流な観梅も好まれ、四天王寺に向かう道すがら多くの人が早春の花を楽しみました。
 往時このあたりは市塵を遠ざかっていたといわれますが、現在はビルの谷間となっています。

 手前に花がいっぱいの梅の木、その下を歩く花見の客、遠景には宴席が描かれています。右手前には立って歓談する3人の男たち、瓢箪の中はお酒でしょうか?短冊は無地の赤とブルーが使われ、色紙はブルーで横縞が入っています。タイトルは「浪花百景」、絵師は芳瀧で、こちらは彫り師は省略されています。

浪花百景「梅やしき」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、高津宮、ウヱキヤ、クロヤキヤ、梅ヤシキの文字が見られます。挿絵もついていて、モデルルートにも入っています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」では、高津神社の本殿や神輿蔵が描かれ、西側斜面の坂や石段も詳しく描かれています。
 千日前通りが拡幅されて市電が走っています。高津神社と生魂神社の間を結ぶ参道のつながりもよくわかります。千日前通りの拡幅の際に、道路の傾斜を緩くするために、「真言坂」の一部が埋められたのかもしれません。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 今回は、「浪花百景」の高津、吉助牡丹盛り、梅やしきをご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「浪花の大ひな祭り」開催中です。

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。
≫ http://konjyakukan.com/kikakutenji.html


浪花の大ひな祭りエントランス
ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)
「ひなそふぁ」で、お雛さんと記念写真をどうぞ
享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)


〇今週のイベント・ワークショップ

3月7日(水)~10日(土)、3月14日(水)~17日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月10日(土)
ワークショップ 『木の継ぎ方を知ろう』

13時30分~15時
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費無料

3月11日(日)、12日(祝)、18日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

3月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭伯枝、他
14時~15時

3月18日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。     
協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円     
※当日12時より受付でお茶券を販売します     
13時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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