2018年4月24日火曜日

今週の今昔館(108) 長堀石濱 20180424

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(17)

 「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の17回目、今回は長堀周辺の名所をご紹介します。

■長堀石濱(芳瀧画)
 木津川からまっすぐ東に進む長堀川は船運に都合がよく、往時、長堀川は大阪の幹線河川のひとつとして諸国物産の運搬に利用されていました。
 沿岸には回船問屋や材木商、加工業の店が集まっていました。旧心斎橋と佐野屋橋との間は石工業者の集まる町で「石屋の浜」と呼ばれました。

 長堀を通って運ばれた各地名産の石が浜を埋め、それが名もない名工たちの手によって鳥居や橋、灯篭、狛犬、石仏、道標、石臼、鉢など様々な作品に姿を変えました。元禄期の東大寺大仏の蓮華下の石座も長堀石工職人の仕事です。
 長堀川沿いには、商品の加工製造の町大坂の特色が表れていました。長堀のこの部分は昭和38年までには埋め立てが完了し、長堀地下駐車場に姿を変え、現在では地下街の「クリスタ長堀」となっています。

浪花百景「長堀石濱」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

■長堀材木市(芳瀧画)
 長堀川は東横堀川から木津川まで船場と島之内を分けながら東西に流れる、まさに長い堀川です。江戸初期に開発され、大坂の水の幹線路として諸国の産物の集散地となっていました。
 西横堀川より西のこの地域には堀の南側に土佐藩の蔵屋敷があり、特産品である材木・鰹節などが運び込まれたことから、諸国の材木・鰹節を商う商人が集中しました。

 諸国の銘木が船積みされ、あるいは筏に仕立てられて続々と入荷、所狭しと浜に並べられます。取引はおよそ午前を中心に行われ、材木の上で威勢よく競りが行われました。
 昭和40年代までに埋め立てられ堀端の風情は失われましたが、今もこの辺りには材木問屋が多く、「鰹座橋」「白髪橋」といった橋の名前は交差点名として残っています。

浪花百景「長堀材木市」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保年間発行の浪華名所獨案内を見ると、四ツ橋の東に「サノヤバシ」、「心サイバシ」が描かれています。この辺りが石濱と呼ばれていた地域です。地図は上を東に描かれていますが、上を北にしましたので、文字は横を向いています。
 四ツ橋から西については「高バシ」までの間の橋が省略されていますが、「鰹座」の名前と、「此辺両岸トモ ザイ木市アリ」の文字があります。

浪華名所獨案内の長堀(「津の清」蔵)

 文化3年(1806)発行の増修改正摂州大阪地図を見ると、四ツ橋の東に佐野屋バシ、心斎バシがあり、西側には、宇和島橋、富田屋橋、問屋橋、白髪橋、鰹座橋が描かれています。鰹座橋の南には土佐藩の蔵屋敷があったこともわかります。

増修改正摂州大阪地図(文化3年(1806))の長堀
(ラムゼイコレクションより)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、四ツ橋の東に「さのやばし」、「しんさいばし」があります。長堀の北を堀に沿って市電が走っています。

大阪市パノラマ地図の心斎橋から四ツ橋にかけて
(大阪くらしの今昔館蔵)

 大阪市パノラマ地図の四ツ橋から西、鰹座橋にかけては、浪花百景の「長堀材木市」に描かれている地域に当たります。堀の北側は市電が走り、堀に沿って街路樹が植えられています。南岸には空き地が目に付きますが、堀からの荷上場があったものと思われます。鰹座橋の南西に土佐稲荷神社があります。かつて土佐藩蔵屋敷のあったところです。

大阪市パノラマ地図の四ツ橋から鰹座橋にかけて
(大阪くらしの今昔館蔵)

 今回は、「浪花百景」の長堀付近の名所をご紹介しました。石屋や材木市が名所になっていること自体が大変興味深いことです。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「~生活文化の粋 三井別家中川コレクション~くらしの美を探る 四季のしつらいともてなしの道具」開催中です。

 本展で初公開となる「三井別家中川コレクション」は、江戸時代の豪商三井家の別家中川九兵衛(なかがわくへえ)家に伝来する書画、茶道具、食器類などのコレクションです。
 三井家は、江戸、京都、大坂の三都に呉服店を構え、両替商も営んでいました。幕末の大坂の名所を描いた『浪花百景』には、高麗橋2丁目にあった大坂本店の繫栄ぶりが描かれています。
 ところで、京都と大坂では風土や文化が異なるという指摘が古くからあります。一方で、京・大坂を一体にした上方文化という歴史用語もあります。2つの都市は、淀川という大動脈によって密接に結ばれていて、共通する生活文化が醸成されたことも事実です。例えば、船場言葉は京言葉と似ていますし、町家や町並み、年中行事など、両都市に共通する生活文化は数多く見いだすことができます。また、大坂の豪商・加島屋が京都出水の三井家から花嫁を迎えたように、京都と大阪は人や文化の交流を深めながら共に発展してきました。

 中川家は、享保期頃(1716~1736)より代々京都西陣に近い千両が辻で本家と同じ呉服業を営んでいました。明治初頭に廃業しますが、現在の当主で10代目を数える旧家です。
 歴代の当主たちは家業に勤しむかたわら、歌人や茶人、絵師や陶工と親しく交流しました。また、家業だけでなく年中行事や通過儀礼といった生活面においても、本家や他の別家との交際も重要だったと推察されます。  このような、富裕な商家ならではのくらしを営むなかで、来客をもてなす膳碗や酒器、食器類、四季折々に床の間を飾る掛軸や花器、そのほか調度品や装飾品などが蓄積されました。また、8代目当主(明治14年~大正10年/1881~1921)は茶の湯の愛好者で、茶道具類の収集にも熱心だったといいます。


 本展は“四季のしつらい”と“もてなし”をテーマに、「三井別家中川コレクション」から、端午の節句飾り、季節を演出する掛軸や花器、また、茶道具をはじめ陶器、漆器、ガラス器などの道具類、100点余りを展示します。上方の富裕な商家に育まれたくらしの美を感じていただければ幸いです。

会期 平成30年4月21日(土)~平成30年5月27日(日)
開催期間中の休館日 毎週火曜日
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)


唐獅子牡丹図大鉢
中川家に伝来の甲冑


〇大阪くらしの今昔館は「重文民家をつなぐ!-それは文化とともに建物を次世代に伝えること-」を共催します

民家を愛する方、民家をもっと知りたい方 必見!
重文民家は建物の魅力だけではありません。とても大切な伝統文化をつないでいるのです。

特定非営利活動法人「全国重文民家の集い」設立40周年記念パネルディスカッション

国指定重要文化財民家(重文民家)の半数以上は、代々個人の住宅です。住み続けることで重文民家の貴重な文化を守っています。このパネルディスカッションでは、重文民家が大切な伝統文化をつないでいることを所有者自らが語ります。重文民家を伝統文化とともに次世代につなぐにはどうすればよいかを、英国の事例に学びながら考えます。

◆日時 2018年5月27日(日)
13:30~16:30(受け付けは13:10から)

◆会場 大阪市立住まい情報センタ- 3階 ホ-ル

◆参加費無料(定員150名 先着順)

◆プログラム
1 所有者が語る重文民家をつなぐ意味
・天皇即位の儀式と三木家住宅ー大嘗祭の麻布(麁服(あらたえ))ー 三木 信夫(徳島県 三木家住宅)
・世界文化遺産の地・宮島で厳島文化と上卿屋敷(林家住宅)を伝える 出先 洋一(広島県 林家住宅)
・高林家住宅に伝わる百舌鳥精進と年中行事―家族で受け継ぐ400年-  高林 永統・高林 宗弘(大阪府 高林家住宅)

2 歴史住宅を次世代につなぐための支援~英国の事例から~  (通訳あり)
・次世代につなぐ-英国では歴史住宅をどのように次世代に継承しているのか
  Ben Cowell (イギリス Hisitoric Houses 代表)

3 ディスカッション -重文民家を次世代につなぐために (通訳あり)

※詳しくはチラシをご覧ください。各住宅の紹介を写真とともに掲載しています。
https://www.sumai-machi-net.com/event/images/upload_files/event/33160/event_file/5ad2e65e02b5a.pdf

◆主催:特定非営利活動法人「全国重文民家の集い」
    大阪教育大学居住環境学研究室
    大阪くらしの今昔館
    大阪市立住まい情報センタ-



〇今週のイベント・ワークショップ
4月25日(水)~28日(土)、5月2日(水)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

4月28日(土)
町家衆イベント ワークショップ『組みひもストラップを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

4月29日(日)30日(祝)、5月3日(祝)~6日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

4月29日(日)
イベント ヘルマンハープ コンサート

バリアフリー楽器ヘルマンハープと共に・・・
14時~15時
出演:シュトラーセ

5月3日(木・祝)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南左衛門、南青、南舟
14時~15時

5月4日(金・祝)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”

大坂の町家で開催される、アマチュア落語の会です
14時~15時30分頃
出演:らくてん会

5月5日(土・祝)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭学光
14時~15時

町家衆イベント ワークショップ『兜を作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名(中学生以下対象)、参加費100円
    *当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

5月6日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html


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