2018年5月1日火曜日

今週の今昔館(109) あみだ池 20180501

〇今昔館は開館17周年を迎えました

 2001年に開館した「大阪くらしの今昔館」は4月26日に開館17周年を迎えました。18年目に入った今昔館を今後ともよろしくお願いいたします。

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(18)

 「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の18回目、今回は「あみだ池」をご紹介します。

■あみだ池(芳瀧画)
 阿弥陀池は元禄11年(1698)開創の尼寺和光寺の通称で、境内の池より善光寺本尊が出現したといういわれに因んで建立されました。仏教受容の争いの中、物部氏が堀江の池に仏像を投棄、のちに引き上げられた阿弥陀仏を長野・善光寺の本尊としたという伝承があります。その本尊を元禄7年(1694)四天王寺において出開帳した時に堂を構え、善光寺別院の阿弥陀池和光寺が誕生しました。

 池中に建つ放光閣には常時灯が灯されています。灌仏会の植木市、盆の念仏会の灯籠と折々に信者が集まり、堀江の花街、相撲興行とともに周辺は西大阪一繁栄しました。上方落語「あみだ池」でも知られるように、寺名よりも通称の方が一般に知られ、境内では幕府の許可を得て芸能興行や見せ物、また植木市などが開かれて、大坂町人の娯楽の場となっていました。

 現在和光寺は高層化された建物に囲まれてはいますが、池は今も昔と変わらぬたたずまいを見せています。

浪花百景「あみだ池」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保年間発行の浪華名所獨案内を見ると、長堀と堀江川の間の北堀江に「アミダ池」が描かれ、青物市場と合わせて赤い線で結ばれており観光ルートとなっています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 文化3年(1806)発行の増修改正摂州大阪地図を見ると、白髪橋の南に和光寺阿弥陀池とあり、池も描かれています。図中の●は大坂三郷の北組、▲は南組、△は天満組を示しています。開発された時期が遅い堀江周辺では、三郷が入り乱れている様子が分かります。

増修改正摂州大阪地図(ラムゼイコレクションより)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、同様に和光寺アミダ池とあり、池も描かれています。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、長堀の北の通り(末吉橋通)とあみだ池筋に市電が通り、和光寺の傍には「阿弥陀池」停留所があります。市電の東西線の停留所は「白髪橋」など橋の名前、南北線の停留所は「新町四」「立花通」など町の名前が多い中で、「阿弥陀池」は寺の俗称が停留所名となっている珍しいケースと言えます。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、絵入りで「あみだ池」が描かれ、土佐稲荷、新町演舞場、堀江演舞場と並んで、観光名所の表示である丸囲みとなっています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、地形図の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、東西の長堀北通に市電が通っていますが、南北のあみだ池筋は拡幅前です。
 右上の昭和7年では、あみだ池筋にも市電が通っており、阿弥陀池の前には停留所があります。
 左下の昭和30年では、白い部分が戦災で焼失した地域で、あたり一帯が戦災を受けたことが分かります。この時点では長堀、市電東西線、南北線ともに残っています。図は省略していますが、昭和42年の地形図では、長堀と市電南北線は残っていますが、市電東西線は廃止されています。
 右下の昭和52年を見ると、長堀は埋め立てられ、中央分離帯のある幅の広い長堀通となり、市電南北線も廃止され、新たに都市計画道路として、なにわ筋と新なにわ筋が通って幹線となり、かつての市電通りのあみだ池筋は目立たなくなっています。

明治42年~昭和52年の地形図(今昔マップ3より)

 今回は、「浪花百景」の「あみだ池」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。あみだ池は、いつの時代も名所として地域に大事にされ愛されてきたことがわかります。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇大阪くらしの今昔館は「重文民家をつなぐ!-それは文化とともに建物を次世代に伝えること-」を共催します

 民家を愛する方、民家をもっと知りたい方 必見!
重文民家は建物の魅力だけではありません。とても大切な伝統文化をつないでいるのです。

 特定非営利活動法人「全国重文民家の集い」設立40周年記念パネルディスカッション

 国指定重要文化財民家(重文民家)の半数以上は、代々個人の住宅です。住み続けることで重文民家の貴重な文化を守っています。このパネルディスカッションでは、重文民家が大切な伝統文化をつないでいることを所有者自らが語ります。重文民家を伝統文化とともに次世代につなぐにはどうすればよいかを、英国の事例に学びながら考えます。

◆日時 2018年5月27日(日)
    13:30~16:30(受け付けは13:10から)

◆会場 大阪市立住まい情報センタ- 3階 ホ-ル

◆参加費無料(定員150名 先着順)

◆プログラム
1 所有者が語る重文民家をつなぐ意味
・天皇即位の儀式と三木家住宅ー大嘗祭の麻布(麁服(あらたえ))ー 三木 信夫(徳島県 三木家住宅)
・世界文化遺産の地・宮島で厳島文化と上卿屋敷(林家住宅)を伝える 出先 洋一(広島県 林家住宅)
・高林家住宅に伝わる百舌鳥精進と年中行事―家族で受け継ぐ400年-  高林 永統・高林 宗弘(大阪府 高林家住宅)

2 歴史住宅を次世代につなぐための支援~英国の事例から~  (通訳あり)
・次世代につなぐ-英国では歴史住宅をどのように次世代に継承しているのか
  Ben Cowell (イギリス Hisitoric Houses 代表)

3 ディスカッション -重文民家を次世代につなぐために (通訳あり)

◆主催:特定非営利活動法人「全国重文民家の集い」
    大阪教育大学居住環境学研究室
    大阪くらしの今昔館
    大阪市立住まい情報センタ-




〇企画展「~生活文化の粋 三井別家中川コレクション~くらしの美を探る 四季のしつらいともてなしの道具」開催中です。

 本展で初公開となる「三井別家中川コレクション」は、江戸時代の豪商三井家の別家中川九兵衛(なかがわくへえ)家に伝来する書画、茶道具、食器類などのコレクションです。
 三井家は、江戸、京都、大坂の三都に呉服店を構え、両替商も営んでいました。幕末の大坂の名所を描いた『浪花百景』には、高麗橋2丁目にあった大坂本店の繫栄ぶりが描かれています。

 ところで、京都と大坂では風土や文化が異なるという指摘が古くからあります。一方で、京・大坂を一体にした上方文化という歴史用語もあります。2つの都市は、淀川という大動脈によって密接に結ばれていて、共通する生活文化が醸成されたことも事実です。例えば、船場言葉は京言葉と似ていますし、町家や町並み、年中行事など、両都市に共通する生活文化は数多く見いだすことができます。また、大坂の豪商・加島屋が京都出水の三井家から花嫁を迎えたように、京都と大阪は人や文化の交流を深めながら共に発展してきました

 中川家は、享保期頃(1716~1736)より代々京都西陣に近い千両が辻で本家と同じ呉服業を営んでいました。明治初頭に廃業しますが、現在の当主で10代目を数える旧家です。
 歴代の当主たちは家業に勤しむかたわら、歌人や茶人、絵師や陶工と親しく交流しました。また、家業だけでなく年中行事や通過儀礼といった生活面においても、本家や他の別家との交際も重要だったと推察されます。
 このような、富裕な商家ならではのくらしを営むなかで、来客をもてなす膳碗や酒器、食器類、四季折々に床の間を飾る掛軸や花器、そのほか調度品や装飾品などが蓄積されました。また、8代目当主(明治14年~大正10年/1881~1921)は茶の湯の愛好者で、茶道具類の収集にも熱心だったといいます。


 本展は“四季のしつらい”と“もてなし”をテーマに、「三井別家中川コレクション」から、端午の節句飾り、季節を演出する掛軸や花器、また、茶道具をはじめ陶器、漆器、ガラス器などの道具類、100点余りを展示します。上方の富裕な商家に育まれたくらしの美を感じていただければ幸いです。

会期 平成30年4月21日(土)~平成30年5月27日(日)
開催期間中の休館日 毎週火曜日
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)


唐獅子牡丹図大鉢

中川家に伝来の甲冑



〇今週のイベント・ワークショップ

5月2日(水)、7日(月)、9日(水)~12日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

5月3日(祝)~6日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

5月3日(木・祝)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南左衛門、南青、南舟
14時~15時

5月4日(金・祝)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”

大坂の町家で開催される、アマチュア落語の会です
14時~15時30分頃
出演:らくてん会

5月5日(土・祝)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭学光
14時~15時

町家衆イベント ワークショップ『兜を作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名(中学生以下対象)、参加費100円     
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

5月6日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

5月12日(土)
町家衆イベント ワークショップ『押し花しおりを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します     
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

5月13日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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