2018年10月30日火曜日

今週の今昔館(135) 三井呉服店 20181030

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(40)

 今回は、高麗橋通りに店を構えていた「三井呉服店」をご紹介します。

■三井呉服店(国員画)
 江戸と京都で延宝元年(1673)に三井高利が営業を開始した三井越後屋呉服店(三越の前身)は、元禄4年(1691)に大坂に出店。高麗橋通と堺筋が交差する角に両替商を併営して店を構えました。
 薄利多売・現金取引・掛け値なしの商法で客をつかみ、布の切り売りなどの新商法を次々と展開し、間口半町(55メートル)にも及ぶ広い店先は呉服を求める人々でにぎわいました。
 店の向かい側に糸店、紅白粉店、べっこう店、塗り道具店、鏡店などの支店を設け、ここで嫁入り支度の一切を整えられるようにしたのもこの店の工夫でした。このことから日本初の百貨店と称されています。

浪花百景「三井呉服店(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 三井呉服店は「摂津名所図会」にも描かれています。江戸時代高麗橋には道路元標があり、京街道(東海道五十七次)、暗峠奈良街道などの街道の起点となっていました。橋の西詰には通りを挟んで南北に矢倉屋敷が建ち、高麗橋通りには三井呉服店、岩城呉服店などの大店が軒を連ねていました。
 三井は、東海道五十七次の両端である江戸の日本橋と大坂の高麗橋に店を構えたといわれています。


摂津名所図会「三井呉服店」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
摂津名所図会「高麗橋矢倉屋敷」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、高麗橋通りには、「秤座」があり、「スルガヤ」「玉露堂」「岩城呉服店」「三井呉服店」「三井両替店」が軒を並べています。一方、今橋通りには「平五(平野屋五兵衛)」「天五(天王寺屋五兵衛)」「鴻池」などの両替店が並んでいました。平五と天五の間の筋は「十兵衛横町」と呼ばれ、突き当りには「金相場」がありました。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、東横堀川には葭屋バシの南に、橋の名前は省略されていますが今橋と高麗橋が架かり、さらに南に平野橋があります。高麗橋の西詰には「▲高麗バシ一丁目」の文字が見えます。大坂城に近い東側から1丁目、2丁目となっていたことがわかります。▲は大坂三郷のひとつである北組を示しています。
 地図の上部には3つの橋が見えますが、右から天神橋、難波橋、栴檀木橋です。難波橋は現在の堺筋ではなく「ナニハバシスジ」に架かっていました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、土佐堀通には市電が走り、東横堀川に架かる「よしやばし」が拡幅されています。その南に「いまばし」「こうらいばし」「ひらのばし」が見えます。今橋通りには「ホテル」が、高麗橋通りには「三越」の建物が描かれています。
 堺筋には市電が走り、「北濱二」「高麗橋」「平野町」「瓦町」に電停がありました。「なにはばし」は市電敷設の際に堺筋に架け替えられました。天神橋は、トラスの鉄橋に架け替えられています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、北浜二丁目の角に「株式取引所」の建物が描かれ、その南に「三越」の絵があります。堺筋と土佐堀通りに市電が走り、御堂筋が拡幅されて地下鉄が走っています。難波橋は市電の建設に合わせて、元の位置から一筋東の堺筋に架け替えられ、大きく描かれています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、土佐堀通り、堺筋も拡幅前の姿で、今橋通り、高麗橋通り、平野町通りがやや広く描かれており、「高麗橋通」「平野町」の文字が見えます。
 右上の昭和4年を見ると、土佐堀通りと堺筋に市電が走り拡幅されています。三休橋筋も少し拡幅されています。「株式取引所」、「本町電話局」、「道修町」の文字が見えます。
 左下の昭和42年を見ると、堺筋の市電が廃止されています。堂島川から東横堀川の上空には阪神高速道路が走っています。地下鉄道の表示はありません。
 右下の地理院地図では、阪神高速道路の守口線が開通し、地下鉄道の路線が茶色の点線で表示されています。御堂筋線、堺筋線、京阪本線のほか、京阪中之島線が描かれています。

明治42年から最近の地形図
(今昔マップ3より)
大大阪名所・堺筋三越付近の建築物
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
三越百貨店
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
現在の北浜プラザ(三越の跡地)
北浜プラザタワーマンション
現在の三井住友銀行北浜支店(もと三井銀行)
高麗橋通りを挟んで北側

 今回は、「浪花百景」の「三井呉服店」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月31日(水)~11月2日(金)、5日(月)、7日(水)~10日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)


11月3日(祝)、4日(日)、11日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月4日(日)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能。
磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

11月10日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、
落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、桂文昇
14時~15時

ワークショップ 『ふくろうストラップを作ろう』
各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
①13時30分 ②14時30分

11月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇11月17日(土)18日(日)は関西文化の日
 11/17・18は今昔館の入館料(常設展)が無料です!


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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