2018年10月23日火曜日

今週の今昔館(134) 大江ばしより鍋しま風景 20181023

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(39)

 今回は、「大江ばしより鍋しま風景」をご紹介します。

■大江ばしより鍋しま風景(国員画)
 元禄期は大坂市街地の拡張整備が進んだ時期で、堂島川が改修され、造成地と中之島との間に新しく5本の橋が架けられました。
 中之島と堂島を結ぶ大江橋は、17世紀末に堂島新地が開かれた際に架けられました。
 淀屋橋から大江橋北詰に米市場が移ると、一気にメインストリートとなり、のち淀屋橋とつながって御堂筋を形成することになります。
 米市場に近いため、近辺には諸藩の蔵屋敷が建ち並んでいましたが、画中の大江橋を渡る相場附を腰に掛けた米仲買人の足元から覗く白壁の佐賀鍋島藩蔵屋敷は周辺の蔵屋敷群の中でも規模が大きく、立派な舟入橋も設けられていました。
 蔵屋敷というと、外観を描いている絵や写真が多いため、どうしても「蔵」のイメージが強く「屋敷」を忘れてしまいがちですが、蔵屋敷にも江戸の大名屋敷と同様の御殿があり、西日本の諸藩の大名は参勤交代の際には大坂の蔵屋敷に立ち寄ったといわれています。米を直接搬入できるように「舟入」を持っている蔵屋敷もありました。佐賀藩蔵屋敷はその代表格ともいえるものです。
 明治の廃藩に伴い、跡地は裁判所となり、現在は大阪高等裁判所となっています。

浪花百景「大江ばしより鍋しま風景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
佐賀藩大坂蔵屋敷(「大阪・都市住宅史」より)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、当時は中之島は難波橋の手前までしかなく、難波橋は大川に架かり船場と西天満を結んでいました。難波橋の北詰には「蔵屋敷多シ」の文字があります。佐賀藩蔵屋敷は、地図の赤丸印のあたり、蜆川の東側にありました。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、蜆川(曽根崎川)に架かる「大江小バシ」から東に行ったところに「鍋島」の文字があります。ここが佐賀藩蔵屋敷の場所です。他の藩の蔵屋敷に比べて敷地規模も大きかったことが分かります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、蜆川(曽根崎川)は明治42年の北の大火の後、瓦礫によって埋め立てられています。堂島川の北岸、御堂筋に面して東側に白いビルが描かれていますが、これが堂島ビルです。このビルの東側から北側にかけてが、かつての蜆川の跡です。
 蜆川跡の東側には、白い3階建てのビルと赤レンガの「控訴院」が描かれています。蔵屋敷の跡は、裁判所をはじめ、警察、日本銀行、市庁舎、図書館、公会堂などの公共用地として利用されています。堂島ビルも松山藩の蔵屋敷の跡地に建っています。


大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、中之島には市役所、豊国神社、図書館、公会堂が並び、対岸の西天満には「控訴院」の文字があります。区裁判所、地方裁判所の文字も見えます。難波橋は市電の建設に合わせて、元の位置から一筋東の堺筋に架け替えられています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、控訴院の文字はありませんが、建物の形が描かれています。
 右上の昭和7年を見ると、控訴院の文字があり、東隣にはバツ印の警察署があります。難波橋と大江橋の間に鉾流橋が架けられています。御堂筋には市電が走っています。中之島には、市役所、豊国神社、図書館、公会堂が並んでいます。
 左下の昭和42年を見ると、控訴院の名称が高等裁判所に変わっています。御堂筋は拡幅され、市電は廃止されています。堂島川の上空に阪神高速道路が走っています。
 右下の平成8年では、高等裁判所が敷地の北側に建て替えられています。御堂筋から北東に分岐する新御堂筋が開通しています。地下鉄の路線が茶色の点線で描かれています。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)
堂島川に架かる大江橋(重要文化財)
大江橋のたもとの中之島の碑
大江橋より水晶橋を望む
佐賀藩蔵屋敷跡には大阪高等裁判所

 今回は、「浪花百景」の「大江ばしより鍋しま風景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月24日(水)~27日(土)、29日(月)、31日(水)~11月2日(金)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)


10月28日(日)、11月3日(祝)、4日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


10月27日(土)
ワークショップ『バランスとんぼを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
各回先着10名、参加費:200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

10月28日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


11月4日(日)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  10月23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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