2018年11月13日火曜日

今週の今昔館(137) 八軒屋夕景 20181113

〇11月17日(土)18日(日)は関西文化の日
 11/17・18は今昔館の入館料(常設展)が無料です!両日は、町家衆イベント「楽市町家」を13時~16時に開催しています。


〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(42)

 今回は、「八軒屋夕景」をご紹介します。

■八軒屋夕景(国員画)
 八軒屋は、天神橋と天満橋の中間南岸の地名。古来、寺社参詣のため淀川から熊野街道に入る旅の中継地で、八軒の宿が軒を並べていました。
 ここには京都へ行き来する様々な船の船着き場があり、船頭・馬子・旅宿の客を集める声や乗客たちの口論する罵声など、昼夜を問わず人々の喧騒に包まれ、まさに大川水運の一大拠点でした。
 ちなみに、「東海道中膝栗毛」の弥次さん喜多さんを乗せた三十石船と呼ばれる川船は、京都伏見から大坂までを半日で、大坂から伏見までは丸一日で航行しました。
 明治になると蒸気船に変わり、鉄道が開通すると船着き場の役割は低下し、衰えました。

浪花百景「八軒屋夕景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 八軒屋は、摂津名所図会にも描かれています。こちらでは、川の水位が上下しても船からの陸への人やモノの移動ができるように設置された階段状の「雁木」が描かれ、賑わっている浜の様子が詳細に表現されています。  

摂津名所図会「八軒屋」

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋と天神橋の間に「八ケン家」があり、「三十石舟ツキ 宿ヤ多シ」と書かれています。南には「ザマヲタビ(坐間神社御旅所)」「火ノ見ヤグラ」があります。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、天満橋の南詰に「▲京橋二丁メ」の文字があり、「▲四丁メ」の傍に「八軒屋」と書かれています。そこから南へ伸びる筋には「▲ヲハライスジ」の文字があります。八軒屋は熊野街道の起点となっていました。地図に書かれている▲の記号は、大坂三郷の「北組」を表しています。大川の対岸にある「〇」は「天満組」を表しています。
 天満橋は、谷町筋より一筋東に架かっていたことがわかります。天神橋の北詰には、「〇十丁メ」の文字があり、天神橋筋は東から数えて十本目の筋ということから「十丁目筋」と呼ばれていたことが分かります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、土佐堀通と谷町筋には市電が走り、天満橋と天神橋に停留所があります。その間に「八軒屋」の記載はありません。大川には川を上下する船が描かれています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、パノラマ地図と同様土佐堀通と谷町筋に市電が走り、こちらでは、天満橋、八軒家、天神橋に停留所があります。八軒家停留所の前に「八軒家」の文字があり、寝屋川が付け替えられて將基島が埋め立てられています。対岸には「天満配給所」の文字があります。天満青物市場の跡地に当たります。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、土佐堀通り、松屋町筋、谷町筋ともに拡幅前の姿です。嶋町の通りがやや広く描かれており、「嶋町」の文字も見えます。
 右上の昭和4年を見ると、土佐堀通りと谷町筋に市電が走り拡幅されています。天満橋では道路橋の東側に市電用の橋が架けられています。中之島が東側に広げられ、天神橋まで届いています。
 左下の昭和42年を見ると、谷町筋の市電が廃止されています。天満橋の東側で京阪電車が地下に入り、天満橋から天神橋の間の大川が一部埋め立てられて川幅が狭くなり、天満橋南詰の土佐堀通りの北側にビルが建っています。松坂屋が日本橋から移転してきたビルです。
 右下の地理院地図では、地下鉄道の路線が茶色の点線で表示され、地下鉄谷町線、京阪電車の本線に加えて、中之島線のルートも描かれています。天満橋の上空に橋が架かり、土佐堀通と立体交差している様子が分かります。上記3枚の地形図では、八軒屋の記載はなくなり、かつての舟運が衰えていまいたが、最新の地理院地図では、船の記号と航路が描かれ、舟運が復活している様子が分かります。

明治41年から最近の地形図
(今昔マップ3より)

 現在の八軒家浜には、2008年に観光用の岸壁である船着き場が整備され、常夜鐙が復元されています。2009年には観光船案内所、情報発信スペース、レストランからなる川の駅「はちけんや」が開業しています。かつては渡辺の津とも呼ばれた八軒家は、熊野街道の起点でした。

現在の八軒屋浜
川の駅「はちけんや」
川の駅「はちけんや」
現在の八軒屋浜(常夜鐙)
熊野街道起点の碑
八軒家の解説板(浪花百景)
八軒家から見た天神橋
八軒家からの天神橋夜景
八軒家からの夜景

 今回は、「浪花百景」の「八軒屋夕景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇今週のイベント・ワークショップ

11月14日(水)~17日(土)、19日(月)、21日(水)、22日(木)、24日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

11月18日(日)、23日(祝)、25日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


11月17日(土)18日(日)
関西文化の日、11/17・18は今昔館の入館料(常設展)が無料です!


町家衆イベント 楽市町家
13時~16時

11月18日(日)
町家衆イベント 連鶴(有料)

折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け、
    14:30~中級者以上向け

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

11月24日(土)
町家衆イベント ワークショップ『削り花を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

11月25日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  11月13日・20日・27日 、12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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