2018年11月20日火曜日

今週の今昔館(138) 京橋 20181120

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(43)

 今回は、「京橋」をご紹介します。

■京橋(芳雪画)
 大坂城の北側、寝屋川に架けられた橋、京街道がこの橋を起点としています。東海道五十七次の終点でもあり、大坂の玄関口として賑わいました。高欄擬宝珠の立派な公儀橋。京橋の北詰には川魚市場がありました。
 大坂城の北の玄関口、京橋は京街道・大和街道の重要幹線の起点。京橋の名前の由来となった京街道は、秀吉の頃に淀川左岸に文禄堤が構築されたことによって成立した京都と大坂を結ぶ幹線で、京橋は京街道とともに架橋された「天下橋」です。
 夏の陣で焼失しましたが、徳川幕府は重要視して元和9年(1623)に再建、家光の頃に制定された公儀橋十二橋のうち、幕末には京橋だけに欄干に擬宝珠が付けられていました。
 今とは違い、最長時には100メートルを超える長さを誇っていました。以前は橋の南詰に青物市が立っていましたが天満に移動、新たに鯉・鮒・鮎・鰻などの川魚市場が開かれました。
 現在、京橋の上には自転車・歩行者専用の大坂橋が架かっています。

浪花百景「京橋(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

  

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋の東側に「京バシ」があります。橋の南詰には、東御奉行所、御代官ヤシキがあり、大坂城の京バシ口につながっています。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、天満橋の東側に「京橋」が描かれ、北には「備前島橋」があります。京橋を渡り東へ進むと、「片町ト云」の文字があり、その先に「野田バシ」があります。京街道はこの橋を渡り、北東へ進みます。
 京橋の南詰には石垣の絵が描かれ、城の京橋口との間が広場になっています。広場の西側に「東町奉行所」、その西に「御代官所」があります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「きやうばし(京橋)」の南詰には「職業紹介所」があり、その南に「偕行社」が描かれています。片町には市電が野田橋の手前まで伸びています。備前島橋には京阪電車が走っています。
 京橋口を入ると「兵器支廠」があり、大阪城内は陸軍が使用していました。東町奉行所のあったところは「衛戍病院」になっています。


大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、土佐堀通に市電が走り、天満橋、偕行社前、京橋、相生町、片町に停留所があります。京橋の南詰には「京橋前ノ町」の文字があり、天満職業紹介所があります。偕行社の南西には、国防婦人会軍人会館の文字も見えます。昭和6年に完成した大阪城天守閣が大きく描かれています。衛戍病院は陸軍病院の表示に変わっています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、京橋の南詰は広場となっており、その西側に学校と病院が描かれています。病院には「M」の表示もあり、陸軍病院であることが分かります。京阪電車は幅の狭い備前島を通り、駅の手前で寝屋川を跨いでいます。城の中には兵器支廠の文字が見えます。
 右上の昭和4年を見ると、学校と病院の間を抜けた市電が寝屋川を跨ぎ、片町へと延びています。並行して京阪電車が通っています。寝屋川が付け替えられて、備前島が陸続きになりました。
 左下の昭和22年を見ると、天満橋から東へ土佐堀通りが拡幅され、片町へと続いています。白くなっている所は戦災によって焼失した地域です。
 右下の昭和42年では、天満橋の東側で京阪電車が地下に入っており、市電が天満橋までつながっています。病院の北側に「大阪歯大」の文字が見えます。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 現在の京橋は北詰で土佐堀通りと交差していますが、交差点の名前は「京橋北詰」ではなく「寝屋川橋東詰」となっています。土佐堀通りに架かる寝屋川橋が優先されています。これは、一般に京橋と呼ばれているJRや京阪電車の京橋駅周辺から、西へ約1キロ離れていることもあって、混乱を避けるために京橋の表示を避けているようにも思えます。
 京橋北詰には、「京橋川魚市場跡」の石碑が立っています。京橋の上空には、自転車・歩行者専用橋の大坂橋が架かり、大阪城と桜之宮公園を結んでいます。

現在の京橋
京橋北詰ですが交差点の名前は寝屋川橋東詰
京橋川魚市場跡の碑
京橋の上には歩行者専用橋が架かっています
「大坂橋」は大坂城と桜之宮公園を結びます

 今回は、「浪花百景」の「京橋」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇次回の企画展
「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」

2018年12月17日(月)~2019年2月22日(金)
休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)

 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。

新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

11月21日(水)、22日(木)、24日(土)、26日(月)、28日(水)~12月1日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

11月23日(祝)、25日(日)、12月2日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


11月24日(土)
町家衆イベント ワークショップ『削り花を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

11月25日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

12月2日(日)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
14時~15時30分頃
出演:らくてん会

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

町家衆イベント ワークショップ『はたき作り』
①13時30分~ ②14時30分~
当日各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  11月27日 、12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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