今回は、京橋口にある「筋鐘御門」をご紹介します。
■筋鐘御門(國員画)
筋鐘御門は大坂城の京橋口と京橋の間にあった門で、三の丸(北外曲輪)への入り口。
徳川幕府によって大坂城が再建なったとき、旧大和川(現在の寝屋川)と外堀の間にはさまれて三の丸が築造されました。筋鉄門は京橋を渡って京橋口のすぐ東に設けられた門で、三の丸の西の出入り口として利用されました。
当時、ふだんは閉じられていましたが、城外の鴫野郷にあった淀君ゆかりの淀姫神社(弁財天)に詣でる人のために、四と九の日には開放されて通行が許されました。
明治新政府が大坂城跡地を軍の拠点とすると、筋鉄門は造兵司(後の砲兵工廠、軍事工場)の正門として使用されました。門の近くには大阪砲兵工廠化学分析所として使われていた建物が残っています。
浪花百景「筋鐘御門(國員画)」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋の東側に「京バシ」があり、京バシ口との間に広場がありますが、筋鐘御門の表示はありません。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵) |
次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「京橋」の南詰には石垣が描かれており、石垣の南は広場になっています。広場の右手、京橋と京橋口の間に門の絵があります。これが筋鐘御門です。門を入ると三の丸で、いくつかの区画に分かれています。青屋口の近くには「御蔵」と記された区画があります。その南の区画には与力屋敷が並んでいます。
天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵) |
大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「きやうばし(京橋)」の南詰には「職業紹介所」があり、その南側京橋口との間は広場になっています。広場の西側には「偕行社」があり、東側には門が描かれています。この門が筋鐘御門で、門を入ると赤レンガの建物があります。三の丸は砲兵工廠として利用されていました。京橋口を入った辺りには「兵器支廠」の文字が見えます。城内は陸軍に使用されていました。
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵) |
昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、土佐堀通に市電が走り、天満橋、偕行社前、京橋、相生町、片町に停留所があります。京橋と京橋口の間は幅の広い通路となっています。三の丸の中は白地となっており、門は描かれていません。奥に進むと、大阪城の文字の右手に「青屋口」その右に「砲兵工廠M」の文字があります。Mのマークは陸軍を示しています。
大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵) |
今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
左上の明治41年では、京橋の南詰は広場となっており、その西側に学校と病院が描かれています。病院には「M」の表示もあり、陸軍病院であることが分かります。広場の東側に門の表示があり、門を入ると「兵器支廠」の文字が見えます。
右上の昭和4年を見ると、砲兵工廠内の建物が描かれています。寝屋川が付け替えられて、京橋のすぐ西で大川と合流しています。
左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が多く、戦災によって焼失した地域です。
右下の昭和42年では、筋鐘御門から三の丸の奥へ道が通り、城の外周道路となっています。京橋の東にもう一つ橋が架かっています。
明治41年から昭和42年の地形図 (今昔マップ3より) |
現在の筋鉄門は常時解放されており通行ができます。門の両側は、大阪城の石垣の上に赤レンガの壁が建っています。砲兵工廠時代に築かれたものと思われます。
門の近くには、「筋鉄門跡の説明板」や「砲兵工廠・明治天皇聖躅」の石碑があります。門を入ったところには、砲兵工廠化学分析所として使用されていた建物が残っています。
現在の筋鉄門跡 |
大阪城の住所は「大阪城」です |
筋鉄門跡の説明板 |
砲兵工廠・明治天皇聖躅の石碑 |
砲兵工廠化学分析所の建物 |
今回は、「浪花百景」の「筋鐘御門」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。
〇次回の企画展
「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」
2018年12月17日(月)~2019年2月22日(金)
休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)
現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。
今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。
新板勝手道具之図 重宣画 |
絞り器付き電気洗濯機 |
商業中心地区(船場) 「大阪市大観(大正14年)」より |
〇今週のイベント・ワークショップ
11月28日(水)~12月1日(土)、3日(月)、5日(水)~8日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
12月2日(日)、9日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
12月2日(日)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
14時~15時30分頃
出演:らくてん会
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00
町家衆イベント ワークショップ『はたき作り』
①13時30分~ ②14時30分~
当日各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
12月9日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
〇企画展示室のギャラリー利用
企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。
大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。
貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
ただし、次にあげる日は休館日となります。
11月27日 、12月4日
週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/kashidashi.html
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/index.html
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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