2019年6月18日火曜日

今週の今昔館(168) 天満天神 20190619

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(6)

 今回は「浪華の賑ひ」の「天満天神」をご紹介します。

■天満天神
 菅神の聖廟多かる中に、わけて当社は他に越えて霊験あらたなるにより、遠近の貴賤常に詣して間断なく、社頭の繁栄浪華第一といふべし。例月二十五日参詣群をなせり。なかんづく正月は初天神とて詣人往来の道に満ちて、錐を立つるの寸地なく、実に初春の大紋日なり。

浪華の賑ひ「天満天神」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 「浪華の賑ひ」の本文には「天満天神社(てんまてんじんのやしろ)」として以下のように記載されています。
 天神橋通より一丁東の条正面なり。門前より一丁この方に石の大鳥居あり。
 この地を天満と号することは、天満大自在天神鎮座したまふゆゑなり。祭るところ本社中央には、大自在天神、相殿の東には手力雄命・法性坊尊意、西には猿田彦大神・蛭児尊等なり。その余境内に末社多し、これを略す。
 この地は往古北西に続きし松原なりしが、人皇六十二代村上天皇天暦年間、神託にまかせ、勅願あって建立したまふ所なりとぞ。ゆゑに天神の松原あるいは天神の森など古書に見えたり。さる程に霊験あらたなれば、四時に詣人間断なく、遠近より群れ集へば、社内には昔噺あるいは軍書講談の小屋、地上には放下師・品玉・軽業の芸、時行唱歌(はやりうた)の読売、その他菓子類・手遊具の出店なんど、地せきまで列なりて朝暮の繁昌いはん方なし。
 門前には、貨食家(りょうりや)・煮売店・鮓屋・饅頭木菓(このみ)売・珍器奇物の商家軒をならべて数(しばしば)販(ひさ)ぎて饒(にぎは)へるは皆菅神の余光といふべし。例祭六月二十五日は鉾流しの神事と号して、神輿戎島の行宮に渡御あり。その壮観の美景なることは、世に普く見聞する所にして、浪花第一の賑ひなり。


 浪花百景にも「天満天神地車宮入」がありますので、見てみましょう。

 大阪の祭りといえば天神祭。大坂天満宮が天暦3年(949)菅原道真を主祭として創始してから2年後には鉾流し神事が始まりました。三大市場を氏子に抱えた天満宮は経済的にも支えられ、祭りも盛大でした。
 陸渡御の主役は地車(だんじり)、鉦や太鼓の地車囃子が賑々しく奏でられる中、氏地曳航と宮入りが威勢よく行われました。氏地の町々や市場、職人・商人集団が奉納した地車は、安永9年(1780)には84基を数えましたが、幕末頃から衰え、明治29年(1896)には最後に残った一台が天満青物市場から奉納されました。以降は、天満宮境内に飾り付けられたこの「三ツ屋根地車」の上で地車講によって地車囃子の奉納が続けられています。

浪花百景「天満天神地車宮入」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 「浪華名所獨案内」の天満天神付近を見てみましょう。
 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋と天神橋の間、大川の北岸に「青物市場」の文字があります。その北側に「天満宮」が描かれています。天満宮よりも大きな文字で「御宮」とあるのは川崎東照宮です。天神橋筋は、「十丁目スジト云」と書かれています。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、天神橋の北詰には、「〇十丁メ」の文字があり、天神橋筋は東から数えて十本目の筋ということから「十丁目筋」と呼ばれていたことが分かります。「〇」は、天満組を表しています。一筋東の「九丁メ」は天満宮への参道になっています。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、天神橋の北詰から一筋東の筋の正面に天満宮が描かれています。

大阪市パノラマ地図(国際日本文化研究センター蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、赤い枠入りの「天満天神」の文字と、天満宮の大きな挿絵が描かれています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)


 大阪くらしの今昔館の近代のフロアには、天神祭船渡御の模型が展示されています。
 天神祭は大阪で最大の都市祭礼です。祭りは、最終日に大川、堂島川で繰り広げられる船渡御をもってクライマックスを迎えます。大勢の見物人、川沿いの篝火と夜店、そして打ち上げ花火が、大阪の夏の夜を華やかに彩ります。模型は大正10年(1921)に描かれた絵巻「夏祭船渡御図」(大阪天満宮蔵)をもとに再現したもので、かんかん帽に洋服を着た船上の人、蒸気船、川べりに建つ近代建築に当時の雰囲気があふれています。


大阪くらしの今昔館8階の天神祭の模型
「夏祭船渡御図」(大正10年、大阪天満宮蔵)
雀踊の御迎人形(現在展示中)
酒田公時の御迎人形(昨年展示)

 船渡御の舞台は、現在では天神橋から上流の毛馬橋にかけての大川ですが、江戸時代は鉾流橋から下流にあたる戎島の御旅所、大正時代は松島の御旅所に向けて堂島川を中心に行われていました。

江戸時代の船渡御
右上の〇が天満宮、中央が鉾流橋、左下が戎島御旅所
(浪華名所獨案内、「津の清」蔵)
大正時代の船渡御
右上の〇が天満宮、中央が鉾流橋、下が松島御旅所
(大阪市パノラマ地図、大阪くらしの今昔館蔵)
パノラマ地図の天満宮付近
パノラマ地図の鉾流し橋付近
鉾流し神事(天神祭HPより)
パノラマ地図の松島行宮付近
松島行宮での行宮祭(天神祭HPより)

 今昔館の展示を見てから天神祭に行っていただくと、一層実りの多い天神祭見物になることでしょう。天神祭の展示について詳しくは、こちらをご覧ください。http://konkon2001.blogspot.com/2018/07/blog-post_23.html


 天満天神社の現状を写真で見てみましょう。


大阪天満宮南門
南門の天井
天満宮拝殿
天満宮本殿(左)と拝殿(右)
蛭子社
星合之池
川崎東照宮の神輿蔵
高坐招魂社


 今回は、「浪華の賑ひ」の「天満天神」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、付近の様子を確かめてください。


〇企画展「住まいをデザインする顔-関西若手の仕事-」開催中です
 令和元年6月15日(土)~7月15日(月・祝)


 関西には数寄屋、町家、長屋など伝統的な住空間と環境が育まれ、それらを土壌として、現代住宅の分野においても多くの先端的な建築家を輩出してきました。近年はAIやIOTなど通信を利用した機器の家庭への進出もめざましく、社会がグローバル化する中で住まいに求められるニーズも多様化しています。若手建築家はこれに応じて新たなツールや技術を利用しながら設計し、多様で可能性あふれるデザインを展開し、新たな活動領域へとネットワークを広げています。
 本展は2013年に行った企画展「住まいをデザインする顔」に続く展覧会で、今回は関西の代表的な住宅建築家である竹原義二氏・岸和郎氏の企画で、40歳以下のクリエーター30名の多様化する仕事をマッピングして活動領域を可視化し、模型、図面や写真パネル等で紹介します。リアルで先進的な住まいをデザインする人々の仕事の今に触れ、未来の住まいづくりへの予感を提示します。


1.会  期:2019年6月15日(土)~2019年7月15日(月・祝)
  入 館 料: 企画展のみ300円
        常設展+企画展   一般800円(団体700円)
        高・大生500円(団体400円)(要学生証提示)
  *団体は20名以上
    *年間パスポート、大阪周遊パスで入場可。
  *中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、
   大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書提示)。
  交  通:Osaka Metro堺筋線・谷町線、阪急線「天神橋筋六丁目駅」
       3番出口から直結
       JR大阪環状線「天満」駅から北へ650m

2.出展者(50音順、敬称略)
  石倉康平(石倉建築設計事務所)
  今村謙人(カモメ・ラボ)
  大庭徹(大庭徹建築計画)
  奥田晃輔・堀井達也(OHArchitecture)
  加藤正基
  川上聡(SATOSHI KAWAKAMI ARCHITECTS)
  川口裕人+湯川晃平(1110建築設計事務所+ユカワデザインラボ)
  貴志泰正(貴志環境企画室)
  北川 浩明+今津修平(COCCA)
  京智健(京智健建築設計事務所)
  小松一平( 小松一平建築設計事務所)
  近藤陽子(nLDK一級建築士事務所)
  佐藤伸也(佐藤伸也建築設計事務所)
  瀧尻賢
  田中郁恵(田中郁恵設計室)
  殿井環 芦田奈緒(TAO)
  中西ひろむ(中西ひろむ建築設計事務所)
  中村重陽・中村紀章(中村×建築設計事務所)
  西山広志・奥平桂子(NO ARCHITECTS)
  半田俊哉・平田智子(エイチ・アンド一級建築士事務所)
  藤田慶(フジタケイ建築設計事務所)
  古川晋也・門間香奈子(モカアーキテクツ)
  堀賢太(堀賢太建築設計事務所)
  前田裕紀 奥井希 野崎将太+飯坂拓也(前田文化+MICROCOSMOS)
  松本光索(KOSAKU MATSUMOTO)
  安川雄基・冨吉美穂(アトリエカフエ)
  山口晶・白石雄大・山口みどり・大島亮(TEAMクラプトン)
  山口陽登(YAP)
  吉田甫(HAJIME YOSHIDA ARCHITECTURE)
  吉永規夫・吉永京子(Office for Environment Architecture)

3.企画委員
竹原義二 氏(無有建築工房)
岸和郎 氏(K.ASSOCIATES/Architects)

4.関連事業
1.トークセッション 【1】
  出展者が住まいのデザインの今について語ります。
   日   時:2019年6月16日(日)13:30~16:00(13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 5階研修室(当館ビル5階)
   出演者:出展者、特別ゲスト 芦澤 竜一氏(芦澤竜一建築設計事務所)、香川 貴範氏(SPACESPACE一級建築士事務所)
   参 加 費:無料
   定   員:50名(要事前申込 先着順)

2.トークセッション 【2】
   日   時:2019年6月29日(土)13:30~16:00(13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 5階研修室(当館ビル5階)
   出演者:出展者、特別ゲスト 遠藤克彦氏(遠藤克彦建築研究所)
   参 加 費:無料
   定   員:50名(要事前申込 先着順)

3.シンポジウム「住まいをデザインする顔」
  今回の展覧会の企画委員をつとめた建築家竹原義二氏による講演会。後半には出展者を交えて意見交換を行います。
   日   時:2019年6月22日(土)13:30~16:00 (13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 3階ホール(当館ビル3階)
   講   師:竹原義二 氏(無有建築工房)  パネリスト:竹原義二 氏、出展者
   参 加 費:無料
   定   員:200名(要事前申込 先着順)

4.ギャラリートーク
  出展者が展示品を解説します。
  申込み不要、企画展の入場料が必要です。



〇今週のイベント・ワークショップ

6月19日(水)~22日(土)、24日(月)、26日(水)~29日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

6月23日(日)、30日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


6月22日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 露の眞
     14時~15時

町家衆イベント ワークショップ 『つまみ細工』
①13時30分 ②14時30分
当日各回先着10名、参加費300円
     *当日12時より8階インフォメーションで参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
6月23日(日)
     町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿