2018年2月27日火曜日

今週の今昔館(100) 真言坂 20180227

 今週の今昔館は、今回で100回目を迎えました。今後とも「大阪くらしの今昔館」をどうぞよろしくお願いいたします。

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(9)

 9回目も引き続き上町台地の名所をご紹介します。名所の多い天王寺区です。
 今回は昨年の「第9回なにわなんでも大阪検定」に出題された「真言坂」を取り上げます。有栖川有栖さんの「幻坂」の文章を読み空欄を埋める記述式問題で、「真言坂」「浪花百景」が正解でした。「幻坂」の本文は「浪花百景」ですが、錦絵のタイトルは「浪速百景・真言坂」ということで、「浪花百景」「浪速百景」「浪華百景」の3つとも正解と認められたようです。

■真言坂(国員画)
 上町台地の西側には起伏に富んだ地形が坂を形成、いわゆる「四天王寺七坂」と称して趣ある風景を作り出しています。その一つの真言坂は、当時は高津宮参道と生国魂神社北門を結ぶ坂で、両神社への参拝者で周辺はにぎわいました。
 生国魂神社の神宮寺は真言宗の法案寺で、同寺は別当南坊以下、医王院、観音院、桜本坊、新蔵院、遍照院、曼荼羅院、持宝院、覚園院、地蔵院という塔頭十ヶ寺を擁していました。俗に生玉十坊と総称されたこれらの塔頭の内、南坊、医王院、観音院が神社から北へ下る坂道の西側に並び、対面する東側には遍照院、新蔵院、桜本坊の3ヶ寺が並んでいました。そのためこの坂は一般に真言坂と称されました。浪花大師巡りの札所としても知られていました。しかし、明治の神仏分離で塔頭寺院は神社周辺を離れました。
 錦絵のタイトルは「浪速百景・真言坂」となっています。理由はよくわかりませんが、絵によって「浪花」「浪華」「浪速」が使い分けられています。

浪花百景「真言坂」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブより)
現在の真言坂

■生玉絵馬堂(国員画)
 生国魂神社は生島神・足島神を祀る「延喜式」式内大社です。「日本書紀」の大化元年(645)孝徳天皇即位前紀に「仏法を尊び、神道を軽(あなど)」った孝徳天皇が「生国魂社の樹を斮(き)」ったと記されるほどの古社で、「難波大社」とも称されました。
 もともとは、石山本願寺(大坂城地)近傍に鎮座しましたが、信長の石山合戦の際に焼失。秀吉の寄進により現在地に遷座したと伝えられます。
 西側は上町台地の断崖で、安政年間(1854~1860)頃、絵馬堂が作られ、難波津から六甲山系、淡路の島影まで見渡せる絶景が好まれました。西鶴の俳諧興行、近松の「生玉心中」など文芸とのつながりも深い土地です。


浪花百景「生玉絵馬堂」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブより)

■生玉辨天池夜景(芳雪画)
 生国魂神社の東門の前には、かつては池があり、中央の島に弁天宮が祀られていたため一般に弁天池と称せられました。弁天宮の南側部分には白蓮が、北側には紅蓮が一面に植えられて、蓮の香りが四方に芳しく、江戸時代には幽玄な蓮見の名所として知られていました。
 「浪華の賑ひ」には、「門前の池には夏日、蓮の花紅白をまじへて咲き乱れ、荷葉(蓮の葉)の匂ひ四方に芳し」と記されています。池畔の料理屋では蓮葉飯や蓮酒が供され、季節の風流を楽しめました。


浪花百景「生玉辨天池夜景」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブより)

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、「生玉宮」が絵入りで描かれています。東側には鳥居があります。藍色の線は、モデル観光ルートを示しています。
 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」の生魂神社付近を見ると、神社の左上(北側)に描かれている北へ下りる坂が真言坂です。神社の右上(東側)には、辨天池も描かれています。この時代には、まだ池があったのですね。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です)

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 今回は、「浪花百景」の真言坂と生玉神社の絵馬堂、辨天池をご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「浪花の大ひな祭り」開催中です。

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。
≫ http://konjyakukan.com/kikakutenji.html

「ひなそふぁ」で、お雛さんと記念写真をどうぞ
ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)
享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)



〇今週のイベント・ワークショップ

2月28日(水)~3月3日(土)、5日(月)、7日(水)~10日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:11:30、14:30
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月3日(土)
イベント 今昔館のひな祭り

ひな祭りを祝おう
①13時 ②14時30分
中学生以下対象
参加費無料
※各回先着20名 当日、12時~ 8階受付にて、整理券を配布します

3月4日(日)、11日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

3月4日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

3月10日(土)
ワークショップ 『木の継ぎ方を知ろう』

13時30分~15時
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費無料

3月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭伯枝、他
14時~15時


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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初めての方はこちらからどうぞ。
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