「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の22回目は、戎嶋天満宮御旅所をご紹介します。かつて、天満宮の御旅所は川口にありました。
■戎嶋天満宮御旅所(国員画)
天神祭宵宮に行われる鉾流神事は、水辺を禊の場として行う厄除け神事で、天神祭の中でも重要な祭事です。もとは神鉾が流れ着いた場所に祭場を設け、御神霊を移し御旅所としました。翌日氏子たちが船を仕立てて奉還を行うのが船渡御です。
木津川を挟んだ江之子島の対岸、現在の本田小学校付近をかつて戎島といい、岸に面して大坂天満宮の御旅所がありました。江戸時代、旧暦6月25日に行われていた天神祭の船渡御神事では、祭礼では太鼓船(どんどこ船)を先頭に、神楽船などの渡御が進みます。趣向を凝らした御迎人形を掲げた船は、芸能の町大坂らしい。木津川を下った船が夜8時ごろこの地に到着し、周囲は人形を飾りつけた御迎船や多数の見物客で賑わいました。
この御旅所は風水害の被害により明治8年(1875)ここより南の松島に移転し、跡地には華僑の商館が建ち並びました。
浪花百景「戎嶋天満宮御旅所」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」の戎島付近を見てみると、「ヱノゴジマ」と並んで「戎嶋」があり、「御番所」と並んで「天神ヲタビ」の文字があります。この地図は、東が上になっています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵) |
次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。戎島には北から順に「御舟蔵」「御船手ヤシキ」「御三郷蔵地」があり、「▲戎ジマ丁」の横に「天神ヲタビ」があります。▲は大坂三郷の北組を表しています。天満宮の御旅所がありますが、天満組ではなく北組に属しています。この地図では、〇は天満組、△は南組を表しています。安治川沿い、大佛島付近には天満組の〇印が見られます。
天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵) |
大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、戎嶋の地名は川口となり、中央部を南北に市電が走り、「川口町」停留所で東に分岐して「江之子島」を越えて本町通につながっています。御旅所は松島に移っています。江之子島には府庁と警察本部、消防本部があり、川口にも川口警察があります。
川口の外国人居留地は明治末に閉鎖されていますが、街並みはかつての面影をとどめ、緑が多く描かれています。
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵) |
昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、市電のネットワークが拡がり、土佐堀通にも市電が走っています。川口町からは、野田方面、中之島、土佐堀通、本町通、港通と四方に市電網が走っています。
江之子島の府庁は大手前に移転し、跡は工業奨励館となっています。地図左上の野田には、中央卸売市場が開場し、隣には大阪市場冷蔵会社の文字もあります。
大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵) |
今昔マップ3を利用して、地形図の変遷を見てみます。
左上の明治42年では、中之島から大阪港につながる市電が通っています。江之子島には府庁の姿があります。
右上の昭和7年では、野田方面と本町方面へも市電が通り、野田には中央市場が開業しています。
左下の昭和30年では、白い部分が戦災で焼失した地域で、大きな被害があったことがわかります。市電が土佐堀通にも走っています。
右下の昭和42年を見ると、市電は土佐堀通から港通りにつながる路線を除いてその他は廃止され、本町通の南に新たに中央大通が完成し東西方向の新たな幹線となっています。地下鉄中央線はかつての幹線の本町通ではなく新しくできた中央大通を走り、阿波座から西では地上に出て、高架線を走っています。
明治42年~昭和42年の地形図(今昔マップ3より) |
今回は、「浪花百景」の戎嶋天満宮御旅所をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。
大阪くらしの今昔館には川口居留地の模型(今週の今昔館(69)参照)があります。また、大正年間の天神祭船渡御の模型(今週の今昔館(68)参照)もあります。2つの模型と8階展示室床面の「大阪市パノラマ地図」を見比べながらお楽しみください。
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。
〇企画展「~生活文化の粋 三井別家中川コレクション~くらしの美を探る 四季のしつらいともてなしの道具」は終了しました。
〇次回の企画展は、「2018年度 建築設計展」です。
前期:「設計競技入選作品展『地域の素材から立ち現れる建築』」
平成30年6月2日(土)~4日(月)
後期:「全国大学・高専卒業設計展示会」
平成30年6月7日(木)~10日(日)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
●前期 「設計競技入選作品展『地域の素材から立ち現れる建築』」
内 容:設計競技 『地域の素材から立ち現れる建築』の入選作品を展示します。
入場料:無料
主 催:日本建築学会、同近畿支部
大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
【講評会】
日 時:平成30年6月2日(土) 午後2時~午後3時
会 場:大阪くらしの今昔館8階 企画展示室
内 容:近畿支部審査会の委員長であった講師には、展示作品の全体講評に加え、
近畿支部入選作品を中心に取り上げながら、審査員が評価した内容など
について語っていただきます。
コンペに応募される学生および関係者には、貴重な機会となりますので
講評会に是非ともご参加下さい。
講 師:江副 敏史 氏(株式会社日建設計)
●後期 「全国大学・高専卒業設計展示会」
内 容:全国の大学及び高等専門学校の卒業設計優秀作を展示します。
入場料:無料
主 催:日本建築学会、同近畿支部
大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
〇次々回の企画展は、「商都慕情 -今昔館の宝箱-」です。
会期:2018年6月16日(土)~7月8日(日)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:毎週火曜日
「天下の台所」と称された大阪には諸国の物産が集積し、商人は富み栄え、豊かな暮らしを背景に芸術・文化が開花しました。また、「水の都」とも称された大阪は市中に堀川が発達し、多くの橋がかけられました。三大橋と呼ばれた「天満橋」「天神橋」「難波橋」、町人が維持管理した町橋など多種多様な橋があり、魅力ある都市景観を作り出していました。
大阪くらしの今昔館が所蔵する美術品の中には、大阪の景観や、年中行事など、人々の暮らしぶりを描いた絵画が残されています。例えば、「浪花下村店繁栄之図」(佐藤保大筆)は幕末期の松屋(現在の大丸)の店構えと賑わいが、「浪花天神橋図」(菅楯彦筆)には天神橋の上で武家の子ども連れと、天神旗を持った行商人の家族などが行き交う様子などが描かれています。さらに花見や月見など季節の行楽、寺社への参拝、年中行事や祭礼など、古きよき大阪の魅力あふれる街の様子や暮らしぶりを掛軸・絵巻・屏風などの絵画作品を通してご覧ください。
〇今週のイベント・ワークショップ
5月30日(水)~6月2日(土)、4日(月)、6日(水)~9日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
6月3日(日)、10日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
6月2日(土)
イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演・演目:桂出丸、他
14時~15時
6月3日(日)
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00
6月9日(土)
ワークショップ 『版木はがき』
13時30分~15時
参加費:200円
6月10日(日)
イベント 筑前琵琶
和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将、福井旭巽
14時~15時
町家衆イベント ワークショップ おじゃみ
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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