「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の28回目は、「木津川口千本松」をご紹介します。
■木津川口千本松(芳雪画)
木津川口は諸国廻船が出入りする要港であったので、幕府は天保3年(1832)に石堤を築いて防波堤を設け港を整備しました。石堤の上には松が植え連ねられ、千本松と称されました。天の橋立・三保の松原とも肩を並べるほどの景勝地として見物人が多く、潮干狩りや舟遊びに打ち興じました。秋にはこの辺りの川口ではハゼ釣りが盛んで、小舟を仕立てて釣り糸を垂れ、あるいは漁夫に網を打たせ、とった魚を調理して終日ここで酒宴を催すものもありました。釣り客目当ての物売り船も出てにぎわいました。
現在この付近は工場地域となり、千本松渡船と近代的なループ橋の千本松大橋にその名をとどめています。
浪花百景「木津川口千本松」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
今回もこの地図が登場です。今回は地図の下の方、木津川の川筋をご覧ください。尻無川と比べて川幅が広く、河口部には堤が築かれ、堤上に並木が植えられている様子が描かれています。河口には澪標も描かれています。
大阪安治川口細見 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」の木津川河口付近を見ると、「木場」「難波嶋」「三軒家」「泉尾新田」などの地名が見えます。この地図は、東が上になっています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵) |
次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。木津川の河口部は、津守新田、田中新田までが地図に描かれています。津守新田の東には十三間川の文字があります。
天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵) |
大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、木津川の両岸は、空き地が目に付きますが、その中に工場や造船所が描かれています。渡し舟の絵があり、「千本松渡し」「十番渡し」の文字が見えます。地図の右下の堤防には松並木が描かれ、「千本松」の文字も見えます。
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵) |
昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、木津川には下流側から順に「五番渡」「千本松渡」「落合下ノ渡」があります。「平尾浜」の文字も見えます。陸揚げの場だったのでしょうか。木津川と木津川運河には観光艇の絵があります。映画「大大阪観光」にも登場する観光艇水都のルートになっていました。木津川運河には、開閉式の「大船橋」が描かれています。船町には、飛行機の絵が描かれ「大日航空飛行場」の文字も見えます。
大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵) |
明治18年陸地測量部地図です。木津川の両岸には干拓によって新田が開発されている様子がよくわかります。
明治18年陸地測量部地図 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
左上の明治42年では、木津川の両岸は、ほとんどが新田開発された田畑となっています。さらに沖合へと埋め立てが進んでいます。
右上の昭和7年では、土地の造成が進み木津川運河をはじめ多くの運河が掘られています。当時の輸送の主力は水運でした。南恩加島には市街地が形成されています。大正区には市電が、西成区には阪堺電鉄が走っています。
左下の昭和22年では、白い部分が戦災で焼失した地域です。千本松渡しの文字が見えます。
右下の昭和42年を見ると、市街地の復興が進み、川沿いは工場や造船所ができ、内陸部は住宅市街地になっています。大正内港(千歳湾)が掘られ、木津川運河への水路があります。千本松渡しの文字も見えます。
明治42年~昭和42年の地形図(今昔マップ3より) |
今回は、「浪花百景」の「木津川口千本松」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。
〇企画展示室では、大阪市中央公会堂開館100周年記念
特別展「大大阪モダニズム ― 片岡安の仕事と都市の文化―」を開催中です。
会期:平成30年7月21日(土)~9月2日(日)
開館時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)
会期中の休館日:毎週火曜日
今年は、大阪市中央公会堂が開館して100年の節目の年になります。そこで、大大阪時代の幕明けを告げるこの名建築の実施設計を手掛け、大阪の都市計画を指導した建築家・都市計画家の片岡 安の仕事を通して、大大阪時代の建築群と都市景観を展望します。また大大阪時代の都市美を描いた絵画を紹介し、大大阪モダニズムとも呼べるこの時代の美術・文化を再評価します。
本展覧会は、片岡安が初代校長を務めた常翔学園(その前身である関西工學専修學校)の常翔歴史館と、大阪の建築文化の専門博物館でもある大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)の主催により開催します。
「大阪市公会堂新築設計図 透視図」 (岡田信一郎案)大阪市蔵 |
小出楢重《市街風景(街景)》個人蔵 |
川瀬巴水《大阪道頓堀の朝》 大阪市新美術館準備室蔵 |
「大阪の三越」個人蔵 |
〇大正イマジュリィ学会公開シンポジウム 第43回研究会 大阪イマジュリィをもとめてⅢ「ヴィジュアルから切る”大大阪”-アート・博覧会・マスメディアー」は終了しました。
〇今週のイベント・ワークショップ
※本日7月31日火曜日は休館日です。
8月1日(水)~4日(土)、6日(月)、8日(水)~10日(金)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
8月5日(日)、11日(土・祝)、12日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
8月4日(土)
イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 他
14時~15時
ワークショップ 『うちわを作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
8月5日(日)
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00
8月16日(木)
イベント 夏休み まちなみ探偵団
江戸時代の大坂の住まいやくらしのヒミツを極秘調査して、
今昔館を訪れている外国の人に見つけたヒミツを伝えてみよう!
10時30分~16時30分(受付10時15分より)
対象:小学4・5・6年生(安全のため、保護者の送迎をお願いします。)
※当初5,6年生を対象としていましたが、4年生まで対象を広げました。
定員:20名(申し込み多数の場合は抽選)
お申し込みについては「住まい・まちづくり・ネット」をご覧ください。申込期限は8月2日(木)です。
https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33201
※いただいた個人情報は今回のイベント以外の目的には一切使用いたしません。
※参加者決定後、お申し込み時にご記入いただきましたご住所に、参加証及び詳細をお送りします。
※昼食・飲み物は、各自ご用意ください。
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、大阪市立住まい情報センターの住まい・まちづくり・ネット「スタッフのつぶやき」に掲載されています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://sumai-osaka.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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